ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
 一気に冷や汗が出て青ざめていく。まずい、やばい、気づかれたら終わる!

「ちょっと、眼鏡を外してもらってもいいですか?」

「ああ~! ごめんなさい、大事な仕事の打ち合わせが入っていたことを思い出しました! なんか先生と話していたら元気出てきました。ありがとうございます! 治りました! それでは!」

 医師が呆気に取られている間に、一人で自己完結させて逃げるように相談室を出た。

(う~わ、危なかった。気がつかれていないよね? は~会社は危険地帯だわ)

 どこに行っても心が休まる場所がない。やっぱり私の居場所はあの狭くて静かなクリーンルームだなと思った。

(よし、帰ろう)

 仕事が恋人ってなんか寂しい人みたいだけど、恋人と思えるほど熱中できるものがあることは素敵なことだと思う。と、自分で自分を慰めてみる。

 クリーンルームに戻って、ウェアに着替える。全身白で覆われた特殊な防具のようなものだ。年頃の女性なら着るのも嫌がるくらい不格好と思われがちだが、私はこのクリーンウェアが好きだ。なんていうか、安心する。
< 87 / 247 >

この作品をシェア

pagetop