ご令嬢ではありません！～身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです～

実験機器は、みんなで使うものもあれば個人で使うものもある。用途によって変わるので、同じ仕事をしていても、ある人は毎日使うけれども、ある人は一回も使わないという機器もあるのだ。

　私が最近使っているのは最新機器なのだけれど、用途が非常に限られるので先輩たちは使い慣れた方を好んでいた。

「は、はい！ すぐに行きます！」

　慌ててまたクリーンウェアに着替える。扱い方といってもそこまで難しいわけじゃない。一回起動させて説明すればすぐにわかる。
　再びクリーンルームに入ると、主任が申し訳なさそうに謝った。

「すまんな、体調悪いのに」

「いえ、簡単なのですぐに終わると思います」

　大人の男性ほどの大きさの四角く細長い機器を起動させて少し待つ。社長が来る前に説明を終わらせたいのに、起動に時間がかかるのでやきもきする。

　ようやく起動したので、この機器の説明を簡単にする。

「これは成分分析に関する機器で、低沸点から高沸点溶媒まで使用可能です。吸着濃縮や加熱脱着する際には、目的物質を液相へと分配させ抽出濃縮を行うことができます」