ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
「確かに田中は遅くまで仕事をしていることがあります」

 主任は申し訳なさそうに社長に告げた。

(名前を言わないで! 余計に覚えられてしまうから!)

「勤務体制はどうなっているのですか?」

 社長は主任に厳しい口調で追及したので、慌ててガラガラ声で助け船を出す。

「これは仕事ではなく、プライベートのせいです!」

「プライベート?」

 社長が眉根を寄せて聞いた。おそらく本人は睨んでいるつもりはないのだろうけれど、威圧感が怖かった。体調不良はあなたのせいです、とはもちろん言えない。

「はい、恥ずかしながら、好きなゲームの最新作が発売されたので、それで毎日寝るのが遅くなってしまいました。私の管理不足です」

 私の告白に、周りの同僚たちの空気が和んだ。彼らもよくゲームで徹夜しているので気持ちがわかるのだろう。

 主任は『ゲームかよ』的な呆れた顔で私を見た。

 本当はゲームではないのだけれど、出世も昇進も興味がない私は、これで自分の評価が下がったとしても問題ない。
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