難攻不落の女
「確かにそうだな」
「それでもなんだろうね、縁があって出会った子たちにはさ、自分に自信を持てるようになって、楽しく毎日過ごして欲しいって思うじゃない」

 視線が笹目に向かう。なぜかまた目が合った。あちらのテーブルは、ビールを飲んでいるようだ。照れ臭そうな笑みを浮かべて、乾杯、とでも言うように、ジョッキを持ち上げている。

「私も今後どうするかな」
 飲み干して、宇美は席を立った。カウンターの列に並ぶと、すぐに笹目が駆けてきた。

「お、ちょうどいいところに来たね。三人の分、一杯ずつおごるよ。何がいい」
 肩に手を乗せると、笹目はなぜか姿勢を正して、表情を引き締めた。

「俺におごらせてください」
「何言ってんの。年下にお金払わせるわけにはいかないから」

「いやいや、俺が。男ですから」
 財布を持つ手を押さえられた。触れた手のひらの熱さにはっとして、振り払う。

「男も女も関係ないから。あ、まさか接待のつもり? ついでに新しい印刷機売ろうとしてるんだろ」
「違いますよ、ここには宇美さんに会うために来たんですから」
 一瞬思考が止まった。
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