難攻不落の女
「さては、うちの会社に入りたいんだな。それなら私に言うのが早いからな」
好意をくすぐったく感じながら茶化すと、違いますよ、とすぐさま否定してくる。
ウイスキーのグラスが揃うと、カウンターを離れて、それぞれ自分のいた席に戻った。宇美はテーブルを見て眉をひそめた。フィッシュアンドチップス、バッファローチキンに、ミートパイ、おまけに生チョコレートまである。
「なんなのこれ。二人しかいないのに、なんでこんなにたくさん頼むのよ」
「家に帰ると、食いたいものが食えない」
新井は腹部に手を当てる。自宅に帰るとダイエットを強いられるから、ときどき無性にジャンクフードや甘いものが食べたくなるのだと言う。「わたしは新井さんの半分の歳なんだから、健康に気をつけて長生きしてくれないと困る」それが彼女の言い分で、正論すぎて逆らうことができないのだそうだ。
「宇美なら桐谷に告げ口しないだろ」
「言ったところで誰も得しないからね」
「一人で隠れて食べるより、罪悪感がないのが不思議だな」
新井は安心し切った顔で、チョコレートを摘まんでいる。
気心の知れた仲というのだろうか。気を張ったり格好付けたりせずに、無邪気な顔を向けられる相手は、もしかしたら自分だけしかいないのかもしれないと思うと、こちらの人生はずいぶんと塩辛い。
好意をくすぐったく感じながら茶化すと、違いますよ、とすぐさま否定してくる。
ウイスキーのグラスが揃うと、カウンターを離れて、それぞれ自分のいた席に戻った。宇美はテーブルを見て眉をひそめた。フィッシュアンドチップス、バッファローチキンに、ミートパイ、おまけに生チョコレートまである。
「なんなのこれ。二人しかいないのに、なんでこんなにたくさん頼むのよ」
「家に帰ると、食いたいものが食えない」
新井は腹部に手を当てる。自宅に帰るとダイエットを強いられるから、ときどき無性にジャンクフードや甘いものが食べたくなるのだと言う。「わたしは新井さんの半分の歳なんだから、健康に気をつけて長生きしてくれないと困る」それが彼女の言い分で、正論すぎて逆らうことができないのだそうだ。
「宇美なら桐谷に告げ口しないだろ」
「言ったところで誰も得しないからね」
「一人で隠れて食べるより、罪悪感がないのが不思議だな」
新井は安心し切った顔で、チョコレートを摘まんでいる。
気心の知れた仲というのだろうか。気を張ったり格好付けたりせずに、無邪気な顔を向けられる相手は、もしかしたら自分だけしかいないのかもしれないと思うと、こちらの人生はずいぶんと塩辛い。