🆕足湯と君は居場所【BLピュア】

第12話*本当の僕を

*優斗視点

 ひょう花に着いた。

 学校からそのまま、まっすぐここに来た。紺色ブレザーの制服に、黒いダッフルコート。メイクもしていなく、女装はしていない。髪の毛も一本にまとめてある。

 今から、赤井優斗として高瀬と関わる。

 更に嫌われていそうで、学校の時以上に無視され冷たくされないか、不安だった。

 もしも玄関の靴箱を覗いて、高瀬の靴がなかったら帰ろう。

 中に高瀬がいればいいな。
 中に高瀬がいなければいいな……。

 ふたつの気持ちが混ざり合う。

 あんまり客がいないから高瀬の靴があればすぐに分かる。玄関に入り、靴箱を覗くとすぐに見つけた。

 高瀬の黒い靴が……一番下の右端にあった。
 靴を見ただけで心臓の音が早くなる。

 高瀬騙しててごめんなさい。
 高瀬騙しててごめんなさい……。

 何回も頭の中で伝えたい言葉の練習を繰り返す。繰り返しながら高瀬の靴の横に、僕の靴を置いた。靴を置く手が震えてる。

 足湯コーナーへ向かうと、足湯に浸かっている高瀬の背中が見えた。本を読んでいる。

 どうしよう、まだ高瀬は僕がここにいることに気がついていない。やっぱり帰ろうかな……。

 でも今日は高瀬に謝りたくてここまで来たんだし。高瀬の真後ろまで来た。ゆっくり深く、深呼吸をした。そして名前を呼んだ。

「た、高瀬!」

 振り向いてはっとする高瀬。

「何でここにいるんだ?」

 すごく驚いたのか、高瀬は持っていた本をお湯の中に落とした。

「あ、やばっ。本落とした」
「あっ、ごめん……僕のせいだ、ひろうね」
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