君の世界に触れさせて
 そんなふうに、思われたのかもしれない。


 自分で考えて、僕は勝手に落ち込む。


 つい、ため息をついてしまった。


「ご、ごめん、夏川。そんな落ち込むとは思わなくて」
「いえ、気にしないでください」


 作り笑いを浮かべ、その場の空気に耐えられなくなってきたので、カメラを持って部室を出る。


「栄治、大丈夫か?」


 あとからついてきた佐伯が、心配そうに聞いてくる。


「あー……どうだろう。古賀に飽きられたかも、とか嫌われたかも、とか考えたら、なんか苦しくなって」


 正直に言って、僕は余計なことを言ってしまったかもしれないと思った。


 これは、古賀のことが好きだって言っているようなものじゃないか。


「栄治の考えすぎだって。あの古賀ちゃんが、栄治に飽きるわけがないだろ」
「でも僕、去年のこと、話したんだ。古賀ははっきりと言わない僕を、よく思ってない。だから……」


 吹奏楽部に行ったとき、古賀は逃げた僕を責めた。


 言いたいことは言わなければ伝わらないと、苦しそうに訴えた。


 古賀は、僕の写真は好きでも、僕のことはそうでもないのだろう。


 そんなことを考えてしまうと、胸が苦しくて仕方ない。


 そうやってぐだぐだ悩んでいると、佐伯は遠慮なくデコピンをしてきた。
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