偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 彼との会話は楽しいし、端整な顔に浮かぶ笑みに見惚れて鼓動が跳ねるときもある。本当に素敵な人だから。

 でも花穂は今の距離感が心地よくて丁度いい。

(私がカフェを開業出来たら、お客さんとして来てくれないかな)

 そのときを想像すると、楽しみだ。




 アリビオから地下鉄で十五分、下車後自転車で十分程の距離の自宅アパートに着いたのは、午後十一時五十分だった。

 ひと休みしたい気持を抑え、干しておいた洗濯物を畳み、最低限の家事を手早く済ませてから浴室に向かう。

 花穂は週に五日程コールセンターで働いている。シフト制で一日の勤務時間は七時間。

 退勤後の午後七時から十時の三時間はカフェでのバイトがあるから、片付けをして賄いを食べて帰って来ると帰宅は深夜になる。

 なかなかハードな日々だが自分の意思でやっていることなので苦痛ではないし、実家で暮らしていた頃より、充実しているため満足度が高い。

 シャワーの後はほっと一息つく時間。

 明日は休日なので、のんびりスマホで今気になっているカフェの開業ストーリー動画を見ていたら、あっという間に深夜一時を回っていた。
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