偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「そう。ごめん余計なこと言って思い出させちゃって」
伊那が気まずそうな声を出す。
彼女には家を飛び出して来た事情を話しているが、輝から受けた行為については曖昧にぼかして伝えている。思い出すのも口にするのも嫌だったからだ。
伊那が急に響一と恋人に、なんて発言をしたのは未だに好きな相手すらいない花穂を心配しているからだろう。
「大丈夫。私こそ気を遣わせてごめんね。でも今は恋愛よりも仕事をがんばりたいと思っ
てるから」
「そっか……響一さんと話しているときの花穂は、なんとなくこれまでと違う気がしたから、彼を気に入ってるなら協力しようと思ったんだけど」
「ありがとう……もし頼みたくなったら言うね」
「任せて!」
張り切る伊那を見ていたら笑みがこぼれたものの、響一との関係に変化が起こる日が来るとは思えなかった。
(六条さんは確かに話しやすいけど、もし私が恋愛感情を見せたらすぐに距離を置くんじゃないかな)
彼が今優しいのは、花穂が必要以上に近付かず、行きつけのカフェのスタッフという立ち位置を守っているからだ。
伊那が気まずそうな声を出す。
彼女には家を飛び出して来た事情を話しているが、輝から受けた行為については曖昧にぼかして伝えている。思い出すのも口にするのも嫌だったからだ。
伊那が急に響一と恋人に、なんて発言をしたのは未だに好きな相手すらいない花穂を心配しているからだろう。
「大丈夫。私こそ気を遣わせてごめんね。でも今は恋愛よりも仕事をがんばりたいと思っ
てるから」
「そっか……響一さんと話しているときの花穂は、なんとなくこれまでと違う気がしたから、彼を気に入ってるなら協力しようと思ったんだけど」
「ありがとう……もし頼みたくなったら言うね」
「任せて!」
張り切る伊那を見ていたら笑みがこぼれたものの、響一との関係に変化が起こる日が来るとは思えなかった。
(六条さんは確かに話しやすいけど、もし私が恋愛感情を見せたらすぐに距離を置くんじゃないかな)
彼が今優しいのは、花穂が必要以上に近付かず、行きつけのカフェのスタッフという立ち位置を守っているからだ。