偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 花穂は立ち上がり厚手のカーディガンを羽織って家を出る。

 本宅で誰に託そうか迷っていたら偶然祖父がやって来て、声をかけられた。

「おや花穂さん、どうしたんだね?」

「お祖父さま、おはようございます。お届けものに来ました」

「届けもの?」

 祖父が怪訝な表情を浮かべる。

「はい。こちらなんですけど」

「ああ、手紙が紛れてしまったのか。わざわざすまないね。そうだせっかく来たのだからお茶でも飲んで行かないか?」

「あ……では、少しだけ」

 戻ってやりたいことはあるが、せっかくの誘いを断るのは気が引ける。

 祖父に着いて近くの和室に移動した。

 縁側から広い庭に繋がる見晴らしのよい部屋だ。

 温かいお茶を淹れて貰い、他愛ない話をする。

「響一が我儘を言っていないか?」

「いえ、いつも気遣ってくれてよくして貰っています」

「新しい住いで困っていることは?」

「全くないです。設備は充実しているし、お庭の眺めもとても素敵な素晴らしい環境ですし」

 ちらりと中庭に目を遣りながら言うと、祖父はどこか寂しそうに目を細めた。

「お祖父さま、どうしました?」
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