偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「昔、響一と広斗がその庭で走り回っていたのを思い出してね」

「響一さんが?」

 祖父はゆっくり頷く。

「広斗は母親の仕事が忙しかったのもあり、頻繁にうちで預かっていたんだ。ここで育ったようなものだな……響一と仲がよくてふたりでいつも元気に騒いでいたよ」

「今のふたりからは想像出来ませんね。見てみたかったです」

 思わずくすりと笑みがこぼれた。祖父も優しい目をしている。

「ふたりとも親に問題があって放任されていたから、私が育てたようなものだ。そのせいか響一は年寄り臭いと言われたことがあったな」

「そうなんですか? そうは感じませんけど」

 一体誰の発言だろう。

「いや確かに食の好みなど私に似てしまったところもあるからね」

「あ、言われてみれば和食が好きですね」

 祖父の口元が綻ぶ。

「年寄りくさいと言われた響一は一瞬目を丸くしたが、すぐに笑い飛ばしていた。まだ子供だったのに何が悪いんだと笑い飛ばせる度量が大きい子だったよ。情に厚いところもある。自由に暮していたのに、わたしが倒れたら頼んでいないのに戻ってきた」
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