偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 響一について語る祖父の顔は優しかった。本人には厳しいことばかり言っているけれど、心から孫を大切に思っているのが伝わってくる。

「花穂さん、響一を頼みます」

 改まって言われ、花穂も居住まいを正す。

「はい。妻として響一さんを支えられるように努力します」

「ありがとう」

 さわさわと庭から心地よい風が流れてきた。

(お茶に誘って貰えてよかったな)

 響一の幼い頃の話や、祖父の響一への気持を感じられた。

 しかし満たされた気分になっていたところ、祖父がふと顔を曇らせた。

「あとは広斗が落ち着いてくれたらいいのだが」

 どうやらもうひとりの孫が気がかりなようだ。

(広斗さんはしっかりしてそうだし、はそこまで心配しなくても大丈夫な気がするけど)

 そのとき祖父が深い溜息を吐いた。

「先日あんな騒ぎを起こしたのに、まだ現実を見ようとしない」

「先日、ですか?」

「花穂さんにも迷惑をかけてしまったかな。夜遅くまで騒々しかっただろう?」

「そう言えば……」

 少し前に祖父に来客とのことで家中が騒がしかった。

 人払いしていると聞いたから、余程周囲に見られたくないような相手と会っているのかと思っていたけれど。
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