偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 前回も今回も仕事だと偽って、一体何をしていたのだろうか。

 忘れかけていた不安が、再び体中に広がっていく。

「花穂さんどうした?」

 動揺が顔に出たのか、祖父が怪訝そうに声をかけて来る。

「あの……いえ、何でもありません」

 来客があったというときの経緯を詳しく聞きたかったものの、ここで祖父を問い詰めたら、響一との不仲を疑われてしまいそうだ。

 孫の結婚を誰よりも喜んでいた祖父だ。とても心配をかけてしまうだろう。

(聞くなら響一さんに直接だわ)

「心配事があるなら遠慮なく言いなさい」

「はい、ありがとうございます」

 気遣いは嬉しいが、今は言えない。

 なんとか誤魔化しその場を切り上げて部屋に戻ると、出社時間が迫っていた。

 落ち込んではいるが気持ちを切り替えなくてはならない。

 響一の件は一旦考えないようにして支度をして家を出た。

 今日はカフェの近くでイベントがあるらしく、普段よりも客の出入りが多かった。

 新しいスタッフが入って人手は足りているものの、まだフォローが必要なので、全方位に気を配りながら接客をこなす。ひと息つく間も無い程忙しかった。
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