偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 ただ今の花穂には、他のことを考える余裕がない状況が逆によかった。

 少し残業をしてから、食材を買って帰宅。夕食の下準備を済ませ休憩をすると、今朝の出来事が蘇り、憂鬱さに苛まれた。

(響一さんにいつ話そうかな……なんて切り出せばいいのだろう)

 彼が嘘をついたと知ったときはショックだったし、絶対に理由を聞きたいと思った。

 ただ時間が経ち多少落ち着いた今は、その勢いが失せている。

 花穂は元々相手に詰問するような真似が苦手だ。お互いが嫌な思いをするくらいなら自分が我慢した方がいいと考える。

(私が黙っていたら、問題なく今まで通りでいられる)

 けれどその性格のせいで、酷い婚約破棄を経験した。

 そこまで揉めない場合でも自分自身納得いかないまま我慢を続けると、いつまでも尾を引く。

(やっぱりこのままじゃ駄目だ)

 響一とは絶対に険悪な雰囲気になりたくないけれど、不信感を持ったままではいつか相手を信用出来なくなる。

 ひとり悩んでいると玄関が開く音がした。

 はっとして時計に目を遣ると、いつの間にか午後八時を過ぎている。

 花穂はソファから立ちあがり急ぎ玄関に向かう。
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