偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 伊那と一緒に堪能するのを楽しみにしていた。ただこの注目度では控え目にした方が良さそうだ。

「伊那さんの分も取って来るよ。花穂たちは座って待っていて」

 立食形式とはいえ、休憩用にいくつか椅子がある。響一は空いている椅子に花穂と伊那を促し、自分はテーブルに向かおうとしたが、少し移動しただけで招待客に囲まれてしまった。

「六条さん、ご無沙汰しております。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

 妙齢の女性は響一がひとりになるタイミングを狙っていたのかもしれない。

 彼はほんの一瞬だけ真顔になったものの、すぐに愛想笑いを浮かべて対応する。

 次々話しかけられる合間に花穂にちらりと申し訳なさそうな視線を向けた。

「あー面倒なのに捕まった。あの調子じゃ、すぐに戻れないわね」

 伊那が隣でうんざりしたような声を出す。

「面倒なの?」

「真ん中にいる女性、石堂グループの娘だよ。六条グループとも取引が多くて響一さんが無下にできない相手。面倒なのはあの子プライド高いから、ちょっと雑な扱いしただけで騒ぎ出すの。響一さんも今は相手するしかないかな」
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