偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 花穂のことで頭がいっぱいになって失念していたが、百合香を放置したままだった。

「ああ、ちょっと話があっただけだ。もう済んだから大丈夫」

「でも」

 なぜか納得いかない様子の花穂に戸惑いながらも、響一は少し離れた位置で佇む伊那に目を向けた。

 その瞬間うっと息を呑む。伊那は花穂よりも不機嫌で、まるで睨んでいるかのように響一に鋭い視線を向けていたからだ。

 響一はひきつった笑顔で伊那に声をかける。

「伊奈さん、花穂についてくれてありがとう。助かったよ。このお礼はまた後日……」

「響一さん」

 伊那がすたすた近づいて来て、相変らず険しい目で響一を凝視した。

「ど、どうしたんだ?」

「花穂を放って他の女性とこんな人気のないところで何をしていたの?」

 迫力ある声に響一は驚いたが、伊那の隣の花穂もぎょっとした表情になっていた。

 けれど止める様子はない。

(つまり花穂も同じ疑問を持っているのか?)

 響一はようやく自分の失態に気付き、青ざめた。

「花穂、多分誤解しているよな。ちゃんと説明するから聞いて欲しい」

「え、ええ……」
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