偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

◇◇

 四月下旬。ゴールデンウイークを前にしたオフィス街を行きかう人々は忙しない。

 連休の為に必死に仕事を片付けているのだろうか。

 忙しそうにしながらもどこか浮足立って見えるのは、楽しみが待っているからかもしれ
ない。

 そんなことを考えながら窓の向こうを眺めていた花穂の元に伊那がやって来た。

「ねえ、広斗さんと朝宮さんなんとなりそうなんだって?」

「うん。ふたりでお祖父さまを必死に説得したんだって。響一さんもかなり協力したみたい」

「そうなんだ。よかったけど、響一さんはどうしてそこまで親身になってたの? 朝宮さんと噂になったのはそのせいもあるんじゃない?」

「私もそれは思ったんだけど……」

 まるで自分のことのように百合香にまで寄り添っていた響一に違和感を覚え、それとなく聞いてみたことがある。

 すると彼は寂しそうな表情で答えたのだ。

『あのふたりは大学の頃に出会い、お互いの家にばれないように付き合っていたのに、俺の判断ミスで表向き別れる結果になってしまった』

『響一さんのミスって?』

『当時の広斗は百合香との関係にのめり込み過ぎて行動が大胆になっていた。このままだとばれるのは時間の問題だと思った俺は、誰かに告げ口されて揉める前に、自分で祖父たちを説得した方がいいと広斗に訴えたんだ。話せば分かってくれるはずだと。広斗と百合香は俺の意見に納得して祖父や親に打ち明けた』

 しかしそこから両家で大問題になった。響一が自分の考えが甘かったのだと気付いたときは、泥沼になってどうしようもない状態。

 ふたりは表向き別れただの友人に戻ったことにして、交際を続けていた。

 響一は自分が首を突っ込み余計な助言をしたせいで、広斗たちの関係を壊してしまったとずっと後悔し罪悪感に捕らわれ、出来るだけ彼らの協力をしたいと常に思っていたそうだ。
< 210 / 214 >

この作品をシェア

pagetop