偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

『まあ花穂のお父さんならあり得そうだけど』

　伊那は東京に本社がある大企業『加納紡績(かのうぼうせき)』の令嬢だが、高校入学までは母の実家で育った。

花穂の実家の近所だっため、お互いの家に遊びに行ったことが何度もあり、それぞれの親についても知っている。

『お互い親には苦労するね』

　伊那の両親は離婚寸前まで行き長く別居していた。

　結局やり直すことになったけれど、何度も転居を強いられ幼い頃から振り回されて来た伊那は、両親を冷めた目で見ているところがある。

『でもカフェ開店はどうするの？』

「それは……当分無理だよね。私が働いて借金を返せるならお見合いを断って今まで通りの生活をしたいけど、実際無理だもの」

　返済期限は待ってくれないし、今ある貯金を払っても焼け石に水だ。

『なんとかならないかな』

　伊那はそう言い黙り込む。

「今のところは結婚するしか解決方法はないと思う。正直言うと憂鬱だけど、伊那に話したら気分が楽になった」

『だからって問題が解決した訳じゃないでしょう！　花穂は目標に向かって頑張ってたのに……』