桜ふたたび 後編
「で? ストーカーさんは澪とどこで知り合うたんですか?」

「新居のインテリアコーディネータとしてご指名を承りました」

「素敵!」

千世は横文字の職業に弱い。澪は絶望的に天を仰いだ。

「やっぱ、アレ、プロの仕事やったんですねぇ。澪にしては贅沢すぎると思うた」

一瞬頬がピクついたのを隠すように、辻は薄笑いを浮かべて、

「お褒めの言葉ありがとう。今度、一緒に飯でもどう?」

「ほんまぁ?」

「千世!」

澪は厳しい顔で首を振った。

いくら羽を伸ばすと言っても、夫のある身で軽々しい。飽き性なのはわかっているけど、結婚生活にも飽きてしまったなんて、洒落にもならない。
辻も辻だ。しつこく迫っておいて、何て軽薄なのだろう。もちろん本気になどしていなかったけど……。

「ええやん、あんたもたまには夜の街に遊びに行ったら。プリンスに気ぃばっか使うてへんと」

「できないよなぁ。あいつ、すっげぇ独占欲が強いから」

「へぇ~、自分は散々遊んでやったくせに」

いたたまれないように口を結ぶ澪に、千世は赤い舌を出した。

「どうせしばらくはニューヨークから帰ってきいひんのやろ? うちも東京のナイトライフをエンジョイしてみたかったんや。あ〜、わくわくする」

辻の瞳が妖しく光ったようで、澪はゾクリとした。
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