桜ふたたび 後編

「で? ストーカーさんは、澪とどこで知り合うたんですか?」

「新居のインテリアコーディネータとしてご指名を承りました」

「素敵!」

澪は天を仰いだ。千世は横文字の職業に弱い。

「やっぱ、アレ、プロの仕事やったんですねぇ。澪にしては贅沢すぎると思うた」

頬がピクついたのを隠すように、辻は薄笑いを浮かべて言う。

「お褒めの言葉ありがとう。今度、一緒に飯でもどう?」

「ほんまぁ?」

「千世!」

いくら羽を伸ばすと言っても、夫のある身で軽々しい。
飽き性なのはわかっているけど、結婚生活にも飽きてしまったなんて、洒落にもならない。

辻も辻だ。澪にしつこく迫っておいて、他の人にも言いよるなんて。軽薄なひと。もちろん本気になどしていなかったけど……。

「ええやん、あんたもたまには夜の街に遊びに行ったら。プリンスに気ぃばっか使うてへんと」

「できないよなぁ。あいつ、すっげぇ独占欲が強いから」

「自分は散々遊んでやったくせにねぇ」

いたたまれず口を結ぶ澪に、千世は赤い舌をぺろりと出した。

「どうせしばらくはニューヨークから帰ってきいひんのやろ? うちも東京のナイトライフをエンジョイしてみたかったんや。あ〜、わくわくする〜」

千世の言葉に、辻の瞳が妖しく光ったようで、澪はゾクリとした。
< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop