桜ふたたび 後編

「……喧嘩でもしたの?」

千世は訊きたくないと背を向ける。澪は諭すように言った。

「武田さん、心配してたよ。一度、連絡してあげたら?」

「……」

「千世」

千世はジッと下向いている。やがて大きく鼻から息を吐いて、苦いものを吐き捨てるように言った。

「女や」

「え?」

「脩平、女がいたんや」

「うそ」

即座に言い消す澪に、千世は口端だけを歪めたシニカルな横顔を向けた。

「脩平の口からしっかり訊いた。えらいことに、妊娠8ヶ月や」

澪は絶句した。

「笑うやろ? うちが京都で寂しい思いしとったとき、脩平は新潟で元カノとHしとったなんて」

ハハハと嗤う千世の唇が、青ざめて震えていた。

「もう、村中の噂になってる。来月のお祖父さんの一周忌明けに、今度こそ豪華披露宴やって、招待状も出し終えたのに、恥ずかしゅうて新潟にも京都にもおられへん」

頭を棍棒で打たれたように、ガンガンと脳が揺れた。澪は冷静になろうと、額に手をやった。
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