桜ふたたび 後編
❀ ❀ ❀


目を覚ました澪は、満ち足りた気怠さに小さく吐息をもらした。
全身に、幸せの余韻が残っている。

たゆとうような時間を愛おしむように、枕に顔を埋めたとき、頬がひりりと痛んだ。
見ると、乳房にも赤い痕がある。

──ひげ……。

身だしなみには人一倍気を遣うジェイが、時代劇の浪人のような風貌。
しかも、いつもとは違うエキゾチックな香りで、まるで知らない男に抱かれているみたいだった。

「何がおかしいんだ?」

笑顔を向けた澪は、目を白黒させた。

「ジェイ、ひげ……。剃っちゃったんですか?」

「澪が笑うから」

「ごめんなさい。……せっかく伸ばしたのに……」

「ひげなんかすぐに生える。それより──」

鎖骨の下に残った赤い痕を、指先でなぞりながら、

「澪のきれいな肌に、傷をつけたくない」

滑らせた指が胸の鴇色の頂きまで辿り着いたとき、唇から甘い声が漏れてしまい、澪は慌てて起き上がった。

「お腹、空いてませんか? 何か作りましょうか?」

ジェイは、逃すものかと抱き伏せる。
< 154 / 270 >

この作品をシェア

pagetop