桜ふたたび 後編
「どちらから?」
ジェイは潔く廻れ右をした。
そこには、昔気質の板前、いや、昭和の任侠映画に出てきそうな、角刈りの男が立っていた。
白菊の花束を手に、どこか哀愁を感じさせる目で、じっと見つめている。
「……ニューヨークです」
うむ、と顎を引いて、男は表情を変えることなく、墓前に花を手向け蹲踞して合掌した。
ジェイは、その場を離れることができなかった。ただ、男の骨張った背を見つめていた。
ずいぶん長く感じた祈りが終わり、男は両股に拳を当てたまま、振り向かずに言った。
「遠路遙々、ありがとうございました」
男はわずかに首を回して、
「そちらの方は?」
「婚約者です」
「……そうですか」
墓石を見上げた男の顔が、微笑んでいるように見えた。
「本堂へ寄りましょう。和尚が茶を点てて待っている」