桜ふたたび 後編
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窓辺にひとり佇むジェイの背に、薄曇りの空の光が淡く落ちていた。
リンは気づかぬふりをして、手元の資料をデスクの上で整えファイルに綴じた。

ドアが開いて、ブロンドに戻ったニコが笑顔で飛び込んできた。

『食いつきましたよ! アランが唐沢とモーリスに渡りました。これでFMTから注意をそらせる』

『それで?』

急いたリンのデスクから、書類の束がはじかれ床に落ちた。

『計画通り、今晩、大使館で開かれるパーティーで、アランをルネ大臣に引き合わせたあと、極秘に義勇軍のリーダーに面会させる。さすが唐沢、Excellent job!』

『あまり先行されると、バハルとの連携に支障が出ます』

慎重すぎるリンが言う。

『でも、遅すぎたらクレムリンとの調整がとれないでしょ?』

ニコが返す。

ジェイはふたりの興奮をよそに、静かに言った。

『アランは、そう簡単に針を飲み込む相手ではない。もう一度餌をつついて、安全を確認するはずだ。囲み網を少し締めておこう。──検察の動きを、記者に素っ破抜かせるか』

『柏木を使いますか?』

『いや、唐沢との関係を推測される危険は排除したい。MS社のシンを使う。手段はニコに任せる」

「ラジャー」

「リンは予定通り、PMSのペテルギウスからの撤退をリークして、アブラモビッチを喜ばせてやってくれ。彼の恋敵のレディは、中国新幹線TSCと引き換えに、張大人にもてなしてもらっているから、間隙を突いて動くはずだ」

「了解しました」

リンが頷く。

「ニコは引き続き監視を。タイミングを外すな』

密やかに、髪の毛よりも細く、蜘蛛糸のようにしなやかに、張り巡らされたいくつもの罠。
獲物はすでに内にいる。──本人たちはそうと気づかずに。
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