桜ふたたび 後編

「引っ越しは?」

「それが……あの……」

「ここが気に入らない? それならすぐに他を探す」

「と、とんでもない!」

澪は焦って首を振った。ジェイのことだから、冗談ではすまされない。

「……みんなによくしてもらっているから、なかなか、言い出しにくくて……」

理由にもならないと、ジェイの唇の端に呆れた嗤いが浮かんが。

「私は、澪にプロポーズして、OKをもらったはずだが、思い違いなのか?」

澪はギョッと固まった。ジェイの瞳が鋭く光った。

「こわくなった?」

澪は即座に、しかし自信なく、首を振る。

「何が不足なのかな?」

「不足なんて……。わたしはただ、こうしてジェイといられるだけで、満足ですから」

言ってから、「あれ?」と、澪はジェイを二度見した。
当然ここは、感激の〈Love me do〉が返ってくるものだとばかり──。

それなのに、ジェイは前屈みになって膝に両肘つき、組んだ手の上に顎を乗せ、ジッと澪を見つめている。

──やっぱり、彼にごまかしは通用しないか。

「私は満足しない。澪と結婚したい」

「どうして?」

ジェイは、意外そうに顎を上げた。
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