桜ふたたび 後編
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澪は、少し遅れた母の日の花を注文し、自宅用の花を手に、夕暮れのなか帰路についた。

この辺りはビル街で人通りも多く、治安はいい方──なのだけれど……。

澪は足を止め、そっと振り返った。
やはり今日も、しっかり距離を保って外国人女性に尾行されている。

隠密にしては目立つ赤い髪で、こちらが振り返っても身を隠すわけでもない。
冒険心など微塵もなく、一週間の行動がルーティーン化している澪をつけても、出てくるものはなにもないのに。
これも嫌がらせの一つだろうか。

悠璃のことまで調べているとなると、京都の家にも何か影響が及んでいるかもしれない。
悠斗に探りを入れてもらおうか……と考えていたときだった。

ふと、強いハーブの香りが鼻腔を刺した──次の瞬間。
澪が振り返る間もなく、背後から首を押さえられ、右腕を強引に後ろへねじ上げられた。

花束が地面に落ち、ぐしゃりと踏みつぶされた音がした。

都会のど真ん中で、まさか危害を加えられることはないだろう。相手が女性だったこともあり、油断していた。
一瞬の動作で完全にホールドされ、澪はビルの隙間へと引き摺り込まれていた。

街の死角を熟知しているのか、誰も気づかない。
喉を押さえられ、声が出せない。息ができず、意識が遠のいていく──。
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