桜ふたたび 後編
『元気そうだな』

エルモの後ろに、アタッシュケースを下げたブラウンショートの女が愛想なく立っていた。
新顔の秘書か。これだけ側近をコロコロ替えると、セキュリティもあったものではない。
顎を引き目線を下げているが、メガネの奥からつと上目遣いに向けたグリーンアイは気性が激しそうだ。スパイシーで独特なハーバルノート、大柄でりんご型の体型はアイリッシュ系だろうか。

『あなたも』

エルモは片側の口端を上げて嗤った。いつもの皮肉な笑いだが、どこか引っかかる。 

『何か?』

『いいや』

ねっとりとした口調。瞬間、頬に緊張が走ってしまった。
しまったと思ったときには遅かった。エルモは、満足げな笑みを浮かべている。

──まさか?

ジェイは表情を硬化させ振り返った。
リムジンに乗り込もうと頭を低くした体勢で顔を向け、意味深な含み笑いを残すエルモに、ジェイは唇を噛んだ。

──Cross-Checkか。
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