桜ふたたび 後編
ジェイは舌打ちして、再びスマホを耳に当てた。

『澪はどこです』

その冷たい声に、ルナとアレクが何事かと顔を向けた。

〈何を言っている? 気でもふれたか?〉

『セレモニーを妨害したいのなら、もう少しスマートな手段を使ってください』

〈何の話だ?〉

ジェイはますます冷めた口調で言う。

『私を足止めしたことは見逃しても、これは看過できない』

昨夕、ジェノヴァへ戻るためプライベートジェットの駐機場に到着したとき、ジェイは妙な足止めを食らった。
パイロットは、なぜかアメリカの田舎で家族サービス中。副パイロットも、恋人とベッドの中だった。どちらも、急遽フライトがキャンセルになったと連絡を受けていた。

〈言いがかりはよせ〉

──往生際が悪い。

兄なら、パイロットの連絡先を調べるくらい朝飯前。タイミングを見計らって、屋敷にイタズラ電話をかけることも簡単だ。
運転手に偽の指示をして、別の教会にでも送り届けたか。

『澪はどこです』

脅迫めいた声に、電話の向こうでしばらく沈黙があって、それから声を落として質問が返ってきた。

〈……本当に、いないのか?〉

ジェイは眉をひそめて考え込んだ。通話を切ることさえ、しばらく失念するほど。

その耳元に、アレクが低くささやいた。

《警察に通報したほうがいい》

その可能性に、ジェイも辿り着いていた。
最も怖れていた事態が現実となったのか。それならばなおのこと、警察への通報は徒になる。
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