桜ふたたび 後編

『確認がとれた』

ジェイは後ろ手に窓を閉めた。

視線の先に、テーブルに飾られた澪のブーケがあった。
真っ白なバラと鈴蘭に、朝露を模したベビーパールが散りばめられている。

『どこだ?』

『ブリュッセルだ。女が二人降りたのを、空港の職員が目撃している。一人は東洋人だ。今、付近の宿泊施設を片っ端から洗っている』

『無駄だろうな』

ジェイはにべもなく言った。

『輸送機から足がつくのは織り込み済みだろう。すでに高跳びしている。
近隣のパーキングとレンタカー会社、半径200マイル以内のガススタンドの防犯カメラを当たれ』

『根拠は?』

『密室だから』

ウィルは頷いた。
犯人は、澪が不審を覚える前に体の自由を奪う必要がある。縛するか、薬を使うか。
それに、彼女はウエディングドレス姿だ。誰の目にも触れず監禁するなら、車以外に方法はない。仲間が待機していた可能性もある。

『それから──』

躊躇った口調に、踵を返していたウィルは首だけを回した。

『ジェノヴァ港を出港した、ヘリポートのある船を調べてくれ』

『船……か?』

ウィルは長い顎先を指で摘んだ。
なるほど、ワンボックスカーごと乗り込んで、海上からヘリで移動する手段もある。
しかしそうなると、捜索はさらに困難になる。ジェイもわかっているのだろう。

『わかった』

ウィルは、ジェイが抱く悪い予感を払拭させるように、快く頷いた。
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