桜ふたたび 後編

4、攻防

『ラップランド⁈』

ニコの声に、書類を捲っていたジェイは、微かに片眉を上げた。

ニコは、リンとウィルを目配せで召集し、ハンディーフリーに声を潜めている。

『ラップランドって言ったって、広いですよ。アーシャは愛称かな? アレクサンドラ? アナスタシア? ヨアナ?』

何度かの問答の末、ニコがパソコンと格闘するのを、リンとウィルが背後から真剣な表情で覗き込んでいる。

『情報が少なすぎる』

ニコが口に拳を当てて嘆息した。リンとウィルも落胆の色を浮かべている。

『ラップランドがどうした?』

ジェイに問われ、三人は一瞬顔を見合わせたが、観念したのか、ウィルが頭を掻きながら、

『例のエマだが──』

ジェイの瞳孔が微妙に開いた。
アランとの会見以降、各々仕事に専念するよう澪の捜索は私立探偵に一任している。ウィル以下、手を引かせたはずだ。

『事件の前後、メルをラップランドに住むアーシャという姉妹に預けている』

『でもメルは澪を見ていないんだよ』

『監禁場所はアーシャの自宅ではないということよね。どこに隠したのかしら?』

『アーシャが鍵を握っていそうだが』

考え込む三人に、ジェイは言った。

『医療機関だな』
< 249 / 271 >

この作品をシェア

pagetop