桜ふたたび 後編
夕暮れの庭で、ゆく夏へのレクイエムのように蜩が啼いている。
ちりんちりんとベルを鳴らして、自転車が通り過ぎた。
烏が高い声を上げながら、鎮守の森へと帰ってゆく。
「京都んほうはどうすっつもりだ?」
「近々挨拶に伺います。まずは、真壁さんにお許しをいただいてからと思いまして」
誠一は小鼻を疼かせ、綻んだ口元を隠すように空のコップに口をつけた。
それからおもむろに立ち上がると、客間の戸口から台所に向かって大声で言う。
「おい、飯はまだか?」
「は~い、できちょっど」
誠一は肩越しに言った。
「喉が渇いて堪らん。あたも一杯付き合いもはんか?」