桜ふたたび 後編
娘たちはレオの左右に分かれて床に座り、テーブルに肘をつき両手で頬を挟み、父が切るカードを見つめている。
レオの向いのソファには、キングサイズの黒人男が、丸めた背を左右に揺らしながら座っていた。
『ポーカーでもしてるんだろう?』
配られたカードを、一人一枚、テーブルに裏返しに置いてゆく。
三人が出し終わったところで、男が分厚い唇をぼそっと開く。
少女たちはキラキラと瞳を輝かせ顔を見合わせると、声を揃えてカードをめくる。
最後に父親がカードを裏返すと、娘たちは手を叩いて歓声を上げた。
テラスの視線に気づいて、レオが笑みを浮かべてやって来た。
『凄いですよ』
ビブラードのかかった落ち着いた声が、珍しく弾んでいる。
『何をしてるの?』
『数字当てです』
リンは、聞いて損したと、頬に苦笑いを走らせた。
家族サービスもいいが、この非常時に子どもの遊びに興じていたとは、楽観的すぎる。
レオは、リンの心を読んだかのように微苦笑し返すと、猫のような身のこなしで、彼女の向かいに腰を降ろした。
色鮮やかな花々と青い空と海をバックに、陽焼けした彼はみごとに町に溶け込んでいる。
海よりの風に髪の乱れを気にするのは、生粋のパリジャンのプライドなのか、それとも寂しくなった毛髪への愛着なのか……。
『それが、驚くことに、彼は百発百中なんです』
『なんだ、マジックか』
『サイキックか、スピリチュアルかもしれません』
『何かトリックがあるんだろう? 新しいカードを使えよ』
バカバカしい、とウィルは目で言った。
『私も、カードに疵や癖があるのかと思って、先刻、新しいものを六組、買ってきたんです。それでも彼は、みごとに312枚の数字を言い当てました』
リンが何度も瞬きをして『まさか……』と呟いた。
アイスドールと呼ばれる女が、実はゴーストや精霊の存在を信じていることを、ウィルは知っている。
『レオ、彼をここに』
リンとウィルは、訝しげに目を見合った。
──一体、あの犯罪者を、ジェイはどうしようというのだろうか。