再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「どうした?」


「い、今、何時ですか?」


「は? ……六時半を過ぎた頃だな」


ベッドサイドのデジタル時計を確認した彼の声に束の間安堵する。

お迎えの時間は過ぎていないが、今すぐここを出ないと間に合わない。


「すみません、帰ります……!」


情事の余韻もなにもなく、慌てて起き上がろうとする私を力強い腕が支える。


「危ない、希和。どうした? なにをそんなに急いでいる?」


「お迎え……いえ、約束があるんです」


悟己の件は話せないし、話したくない。

勘の鋭い彼に気づかれないように早くここから出なくては。


「なんの、誰との、約束?」


問う声に明らかな不機嫌さが交じり、先ほどまでの優しさに満ちていた室内に緊張が漂う。


「大切な、約束なんです。行かせてください」


間に合わないと悟己が泣いてしまうし、園にも迷惑がかかる。

けれど彼の機嫌は悪くなっていく一方だ。


「……相手は誰だと聞いている」


至近距離で睨みつけられ、息を呑む。

答えを、口にできるわけがない。


「お願い、行かせて」


焦りが募り、目の前の彼の体を押しのけようとすると、大きな手に手首を取られた。

そのまま体が柔らかなシーツに沈む。


「……行かせると思う?」


向けられる妖艶な眼差しに、冷たい光が見え隠れする。

聞いた記憶のない低い、威圧感のある声に背中が凍りつく。
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