再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「――遅い。手土産を買いに行くだけで、なんでこんなに時間がかかる?」


「申し訳ございません。バスが遅れておりました」


入社して二カ月近く経った今日は買い出しで外出していた。

離席中に、副社長から何度も呼び出されていたらしい。

帰社してすぐ副社長室に足を向けたが、機嫌はすこぶる悪い。


「先週、営業課に報告書作成の手伝いを頼まれたそうだな?」


「はい、ちょうど私がまとめていた案件と似ていましたので」


同じ内容を別々に副社長に提出するなら、補足を加えてまとめたほうがいいと考えた。

もちろん渕上さんや営業課の上司には許可を得ている。


「入社して日も浅いくせに、色々な部署に顔を出すものだな」


低い、不機嫌さの滲む声に体が強張る。


「親交を深めるのはいいが、ほどほどにしろ。誤解されるような真似は慎め」


綺麗な二重の目がイラ立ちも露わに私を鋭く見据える。

胸の奥深くに鋭利な棘が刺さった気がした。

じくじく痛む傷口を無視し、必死に心を落ち着かせるが、最近では珍しいキツイ口調に体が強張ってしまう。


もしや、他部署の男性に色目を使っているとでも?


心の奥底に氷塊を埋め込まれたような気がした。
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