再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
……こんな気持ちは初めてだ。

俺に凭れかかるように眠る体をそっと抱え上げたとき、とても軽く華奢で心配になった。

たとえ夜をともに過ごしても、抱きしめて一緒に眠りたいと思う相手に、これまで出会った記憶はない。

ましてや世話をやきたいなんて思いもしなかった。

だが今は、抱き寄せた体から伝わる温もりと鼓動に安心して、満たされていた。

俺の全身が、彼女を守り甘やかしたいと訴えてくる。

心の奥から湧き上がる熱い想いに抗えない。

まさか、この年になって経験するとは思わなかった。


「――これが、恋か?」


口にした途端、想いが心にゆっくりと深く根付いていく。

同時に今までの支離滅裂な感情と振る舞いの答えがやっと見つかった。


ああ、もう、早々に懐に入れて囲ってしまいたい。


俺を想ってほしい。


思った以上に熱く重い自分の気持ちに苦笑する。

初めて抱く感情は戸惑いも大きいが、楽しくて仕方ない。

だがまずは、今までの非礼をきちんと詫び、距離を縮めなければいけない。

もちろん看病の礼もしたい。

身に覚えのない悪評を自ら否定もせず、潔白を訴えもしない彼女は、俺の本気をどう受けとめるだろう?

身勝手と言われようが、この想いはもう止められない。


「……逃がさないから覚悟しろよ」


決意表明する自分の声の甘さに驚く。

俺を恋に落とした責任は取ってもらう。


とんでもなく不器用で真面目過ぎる秘書を、さあ、どうやって手に入れようか?
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