再縁恋~冷徹御曹司の執愛~

5.「お前が好きだ」

とんでもない失態を相談したかったが、親友は週末、福岡に出張中でできなかった。

渕上さんからは、謝罪と礼の電話があった。


『副社長が武居さんにとても感謝されていました』


『いえ、あの、お怒りでは……』


『まさか、なぜです?』


普段と変わりない上司の問いかけに、返答に窮した。

月曜日、不安を心の奥深くに抱え、必死に平常心を装って出社した。

今日も休日ならいいのにと、何度も無駄に願いつつ、自席で朝のルーティンワークをこなす。

幸いにも副社長とは夕方近くまで顔を合わせなかった。

けれど午後五時頃にとうとう呼ばれ、戦々恐々としながら、副社長室に向かう。

副社長は書類に目を通しており、傍らにはいつも通り渕上さんがいた。

ふたりに改めて礼を告げられる。


「回復されて、よかったです」


やっとの思いで無難な回答を絞り出す。

後ろめたさもあり、話し方がぎこちなくなる。

副社長の表情や態度に特段変化はなく、ホッと胸を撫で下ろす。

張りつめていた緊張が少し緩んだとき、副社長がフッと眦を下げて私を見つめた。

思いがけない優しい視線に、鼓動がひとつ大きな音を立てた。

突如立ち上がった副社長が、私と向き合う。

今までとは違う、近すぎる距離に戸惑う。
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