飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 窓際の席に案内される。
「一日に二組しか受け付けてないんだ。昼に一組、夜に一組。料理はお任せコースのみ。運良く予約をとれた。君がツキを呼んでくれたのかな」
 美鷹はそう言って琴鳥に笑いかけた。
 食前酒をいただく。
 優雅な動きでグラスを傾ける美鷹に、思わず見とれた。ネイルの黄色のストーンがきらめく。
「なに?」
 視線に気づいた美鷹がたずねる。
「ネイル、素敵ですね」
「ありがとう」
 微笑を返され、どきっとした。
「私、ネイルをしたことがないんです。やってみたい、とは思ってるんですけど……」
「今度一緒に行く? おそろいのネイルとか、やってみたいな」
 見つめられて、胸が高鳴る。
 バッグに頓服を入れてきたよね、と記憶を確認した。
 コースが進み、ハト料理が提供された。パイに包まれて美しく盛りつけられ、ハーブの緑が鮮やかだ。白い皿にソースが映える。
 逃げそびれたのかな。
 ビルの前の図太いハトを思いだす。
 歩いているから捕まるんだ。
 さっさと飛んで逃げればいいのに。
 そう思ってから、落ち込む。
 逃げられなかった方を責めるなんて、やってはいけないことなのに。
 自分こそが、つらいと思ったその立場なのに。
「子供の頃は鶏肉を食べると共食いだってからかわれたな」
 美鷹は苦笑した。
「私もです!」
 意外な共通点にうれしくなった。美鷹はまた微笑を返した。
「知ってる? ハトは一夫一婦制で、オスも育児をするんだ」
「動物ってみんなメスに子育てを丸投げかと思ってました」
「そうだね。ハトは平和のシンボルだが、愛の象徴でもある。二人の初デートで出てくるなんて、なんだか運命を感じるよ」
 切れ長の目で琴鳥を見つめる。
 琴鳥の心臓が駆け出すように動きを早める。
 美鷹は終始微笑みとともに琴鳥に話しかけ、魅了した。
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