飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 琴鳥が目をまばたかせると、美鷹は微かに笑った。
「オーストラリアの固有種で、オスのしっぽがリラという琴に似ている。全長90センチ前後でメスは50センチくらいだって」
「そんなに大きくて飛べるんですか?」
「あまり飛べないらしい。そのかわり足の力が強いみたいだ」
「そうなんですか」
 本当の鳥でも飛べないなんて。琴鳥は自分を重ねて少し暗い気持ちになる。
 飛んで逃げることなんてできやしないんだ。
「一夫多妻制で、その羽を広げてメスの注意をひき、さえずって求愛するんだ」
 美鷹はスマホを取り出し、画像を見せてくれた。羽は茶色で尾羽根は見事だった。
「動画も見て」
 再生された動画にはコトドリの求愛の声が入っていた。様々な鳥を真似て鳴くのだが、途中から鳴き声がおかしくなる。
「サイレンの真似に……チェーンソーの真似!?」
「再現度がすごいよね」
 美鷹は苦笑した。
「本当にチェーンソーみたい。でもメスはときめくんでしょうか」
「愛されるためならなんでもありなんだな。その気持ちは少しわかる」
 美鷹は琴鳥の目をじっと見た。
 琴鳥の心拍がさらに跳ね上がった。
「君を守らせてほしい」
 美鷹の目は真剣だった。
「ストーカーすら退治できてない私が言うのも変だが。いや、だからこそ君を守りたい」
 抱きしめられて、心臓はさらに鼓動を大きく早くする。ドキドキする振動が美鷹にまで伝わりそうだ。
 琴鳥の目に隣のカップルがキスをしているのが見えた。
 思わずうつむく。
「ダメ、かな……」
 不安そうな美鷹の声がする。
「ご迷惑をおかけしたくないです」
 頭をもたせかけて、琴鳥は答える。
「迷惑なんてこと、あるはずがない」
 顔を上げると、間近に美鷹の顔があった。
 彼女の顔が近づき、琴鳥は目を閉じる。
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