飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 2人の唇が重なった。
 琴鳥の体の奥が熱くなり始める。
「お前ら、こんなところでよくやるな」
 男の声が振ってきた。
 美鷹が体を離す。
 驚いて琴鳥が目を開けると、ボサボサ頭のメガネ男がいた。夜景はそこだけ切り取られ、黒っぽいスーツは闇のようだった。
 彼女は体を固くした。
 異様な雰囲気に気づいた隣のカップルはそそくさと立ち去る。
「何の用だ、ストーカー」
「言ってくれる」
 男の声には嘲笑が含まれていた。
 男は鋭く美鷹を見たあと、琴鳥を睨んだ。
「近づくなと言っただろうが!」
 怒鳴り声にビクッとした。
「やめろ、怯えてるじゃないか!」
 美鷹は立ち上がり、琴鳥を背後にかばった。
「離れろ!」
 男が琴鳥を睨んで叫ぶ。
「彼女に手は出させない!」
 美鷹が叫ぶ。
 瞬間、琴鳥の体がさらに熱くなる。
 琴鳥はヒートを起こしかけていた。
 男は鼻をつまんだ。
「やめろ、フェロモンを出すな!」
 美鷹はすぐさま琴鳥の腕をつかんで走り出す。
 男はなぜかポケットをごそごそして追い掛けて来ない。
 駐車場に戻ると、すぐに琴鳥は頓服薬を取り出し、飲んだ。
「やばい、少しフェロモンに当てられた」
 美鷹は喉元をおさえる。
「大丈夫ですか? どうしたら……」
 オロオロする琴鳥に手を伸ばしかけ、美鷹は苦しそうに拳を握り、引いた。
「ダメだ。君を襲ってしまう。逃げて」
「そんな……」
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