飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
「早く、行って。非常階段を行けば誰にも見つからないはずだ。降りる頃には薬も効いてるだろう。そのまま帰るんだ」
琴鳥は一歩を下がり、だが、美鷹が気になって歩けない。
「幸い、今回は軽度だ。しばらくしたら治まるから。私のためを思うなら、早く」
琴鳥はためらいながら歩き出し、途中から走って非常階段に向かった。
自分がそばにいるほうが美鷹をヒートに巻き込んで苦しめてしまうなんて、心が痛くなった。
駐車場のエレベーターが開き、美鷹のいる階にメガネ男が降りてきた。
「お前だけか」
胸を抑えて荒い息をする美鷹に、メガネ男は言った。
「彼女をお前の餌食にするわけには行かない」
美鷹は吐き捨てるように言った。
「どの口が言う」
男は軽蔑の目で美鷹を見る。
「守るとか、よく言えたものだ」
「私は彼女を愛している」
美鷹ははっきりと宣言した。男は嫌悪に顔をしかめた。
「お前にそんなことを言う資格はない」
「愛を語るのに資格など必要ないだろう?」
美鷹はからかうように言う。その目は笑ってはいない。
視線が火花を散らす。
美鷹は隙を見て素早く車に乗り込み、スタートさせる。
男は慌てて車を避けた。
「……絶対に許さない」
走り去る車を見て、男は苦々しく吐き捨てた。
最後は怖かったけど夢のような時間だった、と琴鳥は電車の中で思う。
あんな素敵な人とデートして、その上。
守りたいと言われて、キスまで。
相手が女性であることは気にならなかった。
今まで、琴鳥は誰ともつきあったことがなかった。
オメガであることでしょっちゅう男性にからかわれたし、オメガを襲ったとニュースになるのはたいてい男性のアルファだったから、男性に対して軽い恐怖心があった。かといって女性が恋愛対象になったことはなかったが。
琴鳥は一歩を下がり、だが、美鷹が気になって歩けない。
「幸い、今回は軽度だ。しばらくしたら治まるから。私のためを思うなら、早く」
琴鳥はためらいながら歩き出し、途中から走って非常階段に向かった。
自分がそばにいるほうが美鷹をヒートに巻き込んで苦しめてしまうなんて、心が痛くなった。
駐車場のエレベーターが開き、美鷹のいる階にメガネ男が降りてきた。
「お前だけか」
胸を抑えて荒い息をする美鷹に、メガネ男は言った。
「彼女をお前の餌食にするわけには行かない」
美鷹は吐き捨てるように言った。
「どの口が言う」
男は軽蔑の目で美鷹を見る。
「守るとか、よく言えたものだ」
「私は彼女を愛している」
美鷹ははっきりと宣言した。男は嫌悪に顔をしかめた。
「お前にそんなことを言う資格はない」
「愛を語るのに資格など必要ないだろう?」
美鷹はからかうように言う。その目は笑ってはいない。
視線が火花を散らす。
美鷹は隙を見て素早く車に乗り込み、スタートさせる。
男は慌てて車を避けた。
「……絶対に許さない」
走り去る車を見て、男は苦々しく吐き捨てた。
最後は怖かったけど夢のような時間だった、と琴鳥は電車の中で思う。
あんな素敵な人とデートして、その上。
守りたいと言われて、キスまで。
相手が女性であることは気にならなかった。
今まで、琴鳥は誰ともつきあったことがなかった。
オメガであることでしょっちゅう男性にからかわれたし、オメガを襲ったとニュースになるのはたいてい男性のアルファだったから、男性に対して軽い恐怖心があった。かといって女性が恋愛対象になったことはなかったが。