飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 デートのときには美鷹がスカートだったこともあり、余計にリラックスできた。
 もしかして、と琴鳥は思う。
 琴鳥の男性への恐怖を察してスカートにしてきてくれたのだろうか。
 あの人ならありうる。
 暗い窓ガラスには夜の風景とともににやけた自分の姿が映っていて、我に返る。
 こんな自分があの人の隣に立つなんて。服も地味で、かわいくなくて。
 そう思って、気がつく。
 せっかく買ってもらった服を、車の中に忘れてきてしまった。
 ストーカーが現れたせいだ。
 美鷹は大丈夫だっただろうか。
 連絡しても迷惑にならないだろうか。
 迷っていると、スマホにメッセージが届いた。
 家に着いたら連絡してほしい。
 要件だけのその文面に、心が舞い上がった。
 帰宅したらすぐにメッセージを送った。
 無事に着きました。今日は本当にありがとうございます。せっかく買ってもらった服を忘れてしまいました。ごめんなさい。
 送ってから思う。受け取りにいく口実で会いに行ってもいいだろうか。
 返信はすぐに届いた。
 こちらこそありがとう。服は送るから。
 がっかりした。迎えに来てもらうときに住所は伝えてあるから、知っているはずだ。
 ため息をつくと、続きが届いた。
 次のデートにはそれを着て来てほしい。今度の休みにまた会える?
 心は羽が生えたかのように再びふわふわと浮かび上がる。
 会いたいです。
 そう送ろうとして、ためらう。
 積極的すぎるだろうか。すぐに返信したら変に思われないだろうか。
 だが結局は舞い上がる心が(まさ)った。
 土曜日も日曜日もあいてます。
 そう書いて返信した。
 ああ、メッセージなんてまどろっこしい。
 翼があればすぐにでも飛んでいくのに。
 それからしばらくやりとりが続き、琴鳥はうきうきと返信していた。
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