飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える

 メッセージのやりとりは続いた。
 琴鳥の毎日は急に彩りを増した。
 心だけは自由に大空を舞い飛んでいるかのようだった。
 帰りは遅くならないように気をつけた。
 ストーカーがまた琴鳥のところに来るかもしれない。
 美鷹も気にしていて、毎日帰宅したらすぐに無事を教えてほしいと言ってくれた。
 あの男はあれ以来現れなかった。
 そもそも琴鳥のストーカーではないのだ。
 木曜日には宅配が届いた。土曜日のデートに着るべく、すぐに箱から出してハンガーに吊るした。
 気が緩み始めた金曜日の夜。
 琴鳥はどこにも寄らずに駅からまっすぐ自宅に向かっていた。
 だから余計に気が緩んでいた。
 住宅街にさしかかったところで、腕をつかまれた。
「きゃああ!」
「静かにしろ!」
 男に口をおさえられた。
「不審者じゃない。聞きたいことがあるだけだ。わかってくれたら手をはなす」
 琴鳥はがくがくとうなずいた。
 驚きと恐怖で息が荒くなる。
「そんなに怖がられるのは心外だ」
 ストーカー男だった。
 琴鳥の口から手がはなれた。が、腕はつかまれたままだった。
「あの女に何を言われた」
「何って」
 眼鏡越しの鋭い目に見据えられ、琴鳥は震えた。
「どうせ、服かなんかを買い与えられ、きれいだのなんだの言われたんだろう。豪華ディナーとお姫様扱いでうっとりして、運命の番だとか口説かれて夜景の見えるベンチでコロリ、ってところか」
「……」
 その通りだった。
「結婚詐欺によくある手口だ。まんまとひっかかってるな」
「違います!」
「じゃあ、あいつの職業言えるか。知らされてないだろう」
 琴鳥の顔から血の気がひいた。確かに聞いていない。
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