ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 励ますように流れを説明しつつ、彼の腕に添えた手をギュッと握られる。

 手袋越しに感じる彼の熱は、それだけで少し私を落ち着かせてくれた。
 そして、少し落ち着いたからこそある事に気付き、そして嫌な予感がする。

「……ねぇ、『俺たちの発表』って?」
「さぁ時間だ、行こう」
「待って!? 発表って何の、何の発表をするの!?」

 焦った私とは対照にどこか楽しそうに笑ったメルヴィは、そのまま私の手に重ねた手で添えていただけだった手をギュッと握るというより掴み、ズルズルと踏ん張って抵抗する私を引き摺って。

“このパターン前にもあったんだけど!!”


「メルヴィ・ゲルベルク王太子殿下、そしてリリアナ・ユングステット様ご入場です!」
「先に教えてえぇえ!!」

 私の叫びは無情にも無視され、名前を大きな声で読まれたと思ったら軽快なメロディまで奏でられる。

“に、逃げられない……!”

 そう察した私は、ザァッと血の気が引くのを感じつつかなり引きつった笑顔を貼り付けながら強制的に会場へと足を踏み入れたのだった。
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