ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

15.魔女だから、魔女らしく

「結構疲れたわね……」

 ずっと側にいる、とは言われたしメルヴィ自身もそのつもりだったとは思う。
 けれど、本人の意志がどうであれ周りが許してくれないことも時にはあるもので。


“早く戻ってこないかな……”

 陛下への挨拶、というより息子が犯罪まがいのことをしていないかどうかの口頭確認が済んだ後フロアに並んで足を踏み出した。

 までは、良かったのだが。


「メルヴィ王太子殿下、ご令嬢とはどちらで出会われたのですか?」
「お会いしたことがないように思うのですが、どちらの家のご令嬢なのでしょう?」
「紺色のドレスを着用されているということは、もう婚約も間近ということなのですか」
「未来の、という発表だったということは何か問題があったという――」


 陛下という最大のバリアから離れたせいか、あっという間に私たちは囲まれてしまったのだ。
 
 もちろん聞きたいのは私の情報だとはわかったが、突然色んな人から話しかけられた私は完全に萎縮しパクパクと口を動かすしか出来なくて。

「問題なんてものはありませんよ。ただ私がまだ彼女を口説いている途中というだけです」
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