ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 ぽつりと溢すように呟いたその言葉は、特に深い意味があって言った訳ではなくただただそう思ったから口にした、だけだったのだが。

「……魔女が星に興味を持ったらどこに行ってしまうんだ?」

 突然ぎゅっと手を握られてドキリと心臓が跳ねる。

“メルヴィ?”

 驚き視線を向けた先にいた彼は、どこか表情を固くしていて。

「俺は空が飛べない。だからもし……!」
「ちょ、ちょっと。魔女だって星を掴めるほど飛べないと思うわよ?」
「だけどっ」

 その切羽詰まった様子に呆気にとられた私は、けれどすぐに彼が何を心配しているのかを察した。

“私が星に興味を持ったと思ったのね”

 屋根へ登っただけでこんなに近いと感じたのだ。
 もし魔女が星に興味を持ったのなら、きっとすぐに出ていくだろう。

 行き先はどこよりも高い山かもしれないし、最も星が綺麗に見える場所を探すのかもしれない。

 行動は魔女によって変わるとは思うが、きっとその場所は城ではないから。


 少し不安げに握られた手をそっと握り返した私は、ソファのバランスを崩さないように注意しながらそっとメルヴィの方へにじり寄った。
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