ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 そして、まるで内緒話をするようにそっと彼の耳元へ顔を近付けて。


「私はどこにも行かないわ、だって綺麗だとは思うけど星に興味は沸かなかったもの。だから、ここにいる」

 まぁ帰る家もないからね。なんて誤魔化すように言葉の締めで少しおどけて言ったのは、少なからず彼の側にいたいと思っていることが気恥ずかしく感じたからだった。

 
「……リリ」

 私の言葉を確かめるようにそっとメルヴィが私の顔を覗き込む。
 その瞳はやはりまだ少し不安そうに揺れていて。

“行かないっていってるのに”

 でも、彼はずっと誰かを待っていたのだ。
 その相手が本当に私なのかはわからないけれど、それでも誰かを待っていた。

“待つということは、置いていかれたということよ”

 それが故意かどうかはわからない。
 必然かもしれないし、偶然かもしれない。

 唐突に私を置いていった母を思い出す。
 師匠へ預けてくれただけまだ愛されていたと、そう思い込むことしか出来なかった幼いあの頃。

 あの頃の記憶があやふやなのは、きっと理解していても悲しかったからだから。

 
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