ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“師匠にも置いていかれたあの日、好きになって欲しいと魔法をかけたのは何でだったのかしら”

 顔が好みだったから?
 それとも、誰かに側にいて欲しかったから――?


「……メルヴィ」

 不安そうに瞳を揺らす彼が昔の私と重なって。
 そんな彼を包んであげたいと思うのは何故だろう。

 その答えを求めるように、もっと彼と近付けるように。

「私――」

 そっとメルヴィの方に顔を上げて目を瞑ると、壊れ物に触れるようにそっと私の頬を彼の右手が添えられて。



「殿下ぁ!!!」

 ガチャン、と大きな音が響き二人してビクリと肩を跳ねさせる。

 慌てて音の方へ視線を向けると、ダニエルと呼ばれたメルヴィの側近眼鏡がソファを引っ掻けている屋根の反対側から顔を出した。


“あっちに天窓があったのね”

 まさかこんな場所まで追いかけてくる人がいるなんて思わなかった私は唖然とし、そしてすぐにこのソファがバランスを崩し落下すれば二人揃って墜落死の可能性があるということに気が付いて。


「もしかしてあの人、私がメルヴィを人質に取ってると思ってないわよね?」
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