ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「えぇ! すごいわ、あれは何?」
「あれは石鹸のお店だよ」
「石鹸の!? 宝石みたいなんだけど!」
「今度行ってみようか。香りも沢山あるんだよ」

“むしろゆっくり進むから気になるものが沢山見れ――”


 そこまで考えて、あ。と気付く。

 この馬車は私がゆっくり街の景色を楽しめるようにスピードを落として進んでいるのだろう。

“なによ、顔がいいだけじゃなく気遣いも出来ちゃうの?”


 流石に妻にはなれない。
 ポンコツな私のかけたものだ、いつ解けるかもわからないのに本気にする訳にはいかないだろう。

“それどころか、魔法が解けたら逃げ出す準備しなくちゃだわ”

 王太子が婚約した、というニュースを聞いたことがないので婚約者はいないはず。
 それだけは私にとって朗報だったが、だからといって本当に私を好きな訳ではないのだから。


「正気に戻ったとき、許して貰えるのかしら」

 窓の外をじっと眺めながら、私はポツリとそう呟いたのだった。
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