ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 遠くなる師匠の背中を呆然としながら見送っていると、唐突に腕を掴まれる。

「っ?」

 ギリッと掴まれたその手の強さに驚き慌ててメルヴィの方へ顔を向けると、奥歯を噛みしめる彼がそこにいて。

「め、メルヴ……」
「行くの?」
「あ、え?」
「……やっと掴める距離に来たんだ。行かせない」
「ちょ、メルヴィッ!」

 私の腕を掴んだまま歩き出したメルヴィに、転ばないように必死に足を動かす。
 途中もつれて躓きそうになったが、そんな私の腕を引き上げるように支えたメルヴィは歩く速度を変えずにそのまま城内へ足を進めて。


“この先は”

 彼が向かっているのが、あの小部屋だとそう確信したのだった。
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