ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

25.期待しても意味がないのは

「教えて、メルヴィ。貴方は私の魔法で私を好きになってくれたの?」
「それは」

 少し困ったように眉尻が下がる彼を見て、自然と口角が上がってしまう。
 私がにこりと笑っていたからだろうか、釣られたらしい彼はいつものどこか澄まして格好つけた笑みではなくふにゃりと不格好な笑顔を携えて。


「わかんないよ。リリが魔法をかける前からずっと好きだったんだ。好きだった子に好きになれ、なんて可愛い魔法をかけられても気持ちを再確認するだけだからね」

 どこか気の抜けたその解答を聞いて私までふにゃりと笑ってしまう。
 
「でも、何度も傷付いてたんじゃないの?」
「傷付いたのは、自分自身の不甲斐なさにだよ。俺より年下の女の子に諭されたみたいで少し気恥ずかしくて、でもその考えが眩しくて」

 だから惹かれずにはいられなかったんだ、と彼が笑う。
 きっとそういうことなのだろう。

 私たちは互いに傷付けたと後悔し、その事実に傷付いて。
 そしてその傷以上に救われていたのかもしれない。


「きっと魔法は成功していたわ」
「でも」
「いいの。魔法が成功していても」
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